風景写真

風景写真の撮り方を徹底解説!準備から撮影終了までの流れがわかる

【この記事を書いた人】
Ryogo Urata
こんにちは。
関西を拠点に風景写真を撮影しているRyogo Urata(@Ryogo_Urata)です。
写真を本格的に始めたのは高校生の頃で、一眼レフを持ち始めて今年で8年目になります。本業は大学院生で、情報学系の研究を行っています。
Twitter:https://twitter.com/Ryogo_Urata
Portfolio:https://ryogourata.myportfolio.com/

今回は私が普段、風景写真の撮影を行っている際に意識していることをまとめました。

ご覧頂いている皆様の参考になれば幸いです。

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①風景写真が仕上がるまで

みなさんは風景写真の撮影というと、どのようなイメージを持たれているでしょうか。

とりあえずカメラを持って景勝地と呼ばれる場所に行き、適当にシャッターを押して帰ってくる。

これだけでも風景写真は撮影できます。

しかし、本当に「作品」と呼べるような完成度の高い風景写真を撮るには、実に多くのプロセスが必要となります。

1枚の作品を作り上げるまでに要する時間の中で、実際にシャッターを切っている時間はごく僅か。

撮影に行くまでの事前準備、撮影地でベストなタイミングを待っている時間、撮影後の現像作業、これらに大半の時間を使います。

今回は、最高の風景写真が完成するまでのプロセスを「事前準備」「撮影」「現像」の3つに分け、それぞれについて詳しく説明していきたいと思います。

②風景写真の「事前準備」

リサーチ量の差が撮影の勝敗を分ける

風景写真の撮影が成功するか否かは、多くの場合出発前に決まっていると言っても過言ではありません。

事前に撮影条件を徹底的にリサーチし、最高の環境で撮影できるよう準備しておく必要があるのです。

インターネットの発達した現代では、こうした最高の環境を整えるための情報はいくらでも手に入れることができます。

だからこそ、そのリサーチ量の差が写真の質の差に直結してしまうこともまた事実です。

妥協なく撮影を行えるよう、細部にまで気を配って情報収集する根気と努力が必要です。

例えば天の川の撮影を考えてみて下さい。

当日の天気や雲量はもちろん、月が出ていては星がよく見えないため、月齢もチェックしなくてはなりません。

また、天の川の見える時刻や位置は時期によって異なるため、その点についてのリサーチも必要です。

さらに、天の川は時期によって見える角度が変わります。

春先は地平線近くに寝そべって見えていた天の川が、夏が近づくにつれてどんどん起き上がり、秋口にはまっ縦に見えるようになります。

下の写真は春先の寝そべった天の川を撮影したものです。

洞窟のフレームに綺麗に天の川が収まっていますが、これが夏の天の川だとフレームからはみ出し、不格好な写真になってしまいます。

自分の撮りたい撮影地が、どの時期の天の川なら最もバランスのよい構図になるのか、よく検討してから撮影に向かう必要があります。

撮影前にリサーチすべきポイント

(1)時期

桜や花火、紅葉などいわゆる「季節モノ」の風景写真は、特定の時期にしか撮影できないことが容易に分かります。

しかし、他にもある特定の時期にしか撮影できない被写体が存在します。

例えば愛媛県の奇岩と夕日を撮ったこちらの写真。

実は鳥居の真後ろに夕日が沈む時期は年間でも数日しかなく、的外れな時期に撮影に行ったとしても、どれだけ天気が良かろうがこのような写真を撮ることはできません。

自分の撮りたい写真は、1年のうちどの時期に見られる風景なのか、きちんと調べておく必要があります。

(2)時刻

自分が撮りたい撮影地は、どの時間帯が最も魅力を発揮する場所なのか吟味しましょう。

例えば、東側が山で西側に向かって開けた撮影地の場合、朝焼けを撮ることは不可能なので、西の空を多く入れて夕焼けを狙うことになります。

地形などから予測を立てて、訪れる時間を決定しましょう。

(3)天候

晴れか雨かはもちろんですが、忘れがちなのが「気温」と「風の強さ」です。

例えばホタル撮影の場合、ピークの時期でも気温が低い夜だと飛翔数が少なくなります。

またリフレクションを狙う際も、風が強ければ水面が波立って美しさが損なわれます。

その被写体に合った最高の天候の日に、撮影に出かけられるようにしましょう。

(4)機材

目的の被写体を撮るには、どんな機材が必要になるのか調べましょう。

例えば鉄道や飛行機の撮影地では、500㎜や600㎜クラスの超望遠レンズが必須となる場所もあります。

また、高いフェンスを越すために脚立と大型三脚が必要になる場所、高速で移動するため高い連写性能が求められる被写体もあります。

場合によっては機材をレンタルするなどし、万全の装備で撮影に臨めるよう準備しましょう。

③風景写真の「撮影」

現地入りしたら「立ち位置」を吟味

徹底した事前のリサーチを行ったら、満を持して撮影に向かいます。

とはいえ、現地に到着したらすぐに撮影を始めるわけではありません。まずはどの立ち位置が被写体を最も美しく見せられる場所なのか、周囲を動き回って十分に吟味します。

例えばこちらの花火の写真。

これを撮った立ち位置よりも左側の場所から撮ると、岩で花火が隠れすぎて見える面積が小さくなります。

逆に右側に寄りすぎると花火と岩が離れ、綺麗な岩のシルエットが出せなくなります。

一見立ち位置が広く見える撮影地でも、実はベストポジションはかなりピンポイントなのです。

最高の条件を得るには根気と忍耐が必要

このような最高のポイントを抑えるためには、早めの現地入りと場所の確保が必要です。

多くのカメラマンが集結する花火などの撮影地は、ギリギリに到着していたのではベストポジションは間違いなく埋まってしまっています。

遅くとも午前中には現地入りし、三脚を設置して自分の立ち位置を確保しておくことが必要です。

花火や日の出、夕焼けなどの撮影は、場所さえ抑えてしまえば後は周囲の人と談笑したり、車で休んだりと案外退屈なく待ち時間を過ごすことができます。

しかし、さらに忍耐力が必要なのが雲海など自然現象の撮影です。

雲海は気温や風の流れによって刻一刻と姿を変えます。

少しでも目を離している隙に一瞬のベストタイミングを逃してしまう可能性もあるため、常に動きに注意しながら設定や構図を変えて撮影し続ける必要があります。

風景写真の撮影は、想像以上に過酷で根性のいる現場なのです。

撮影時は「後から変えられない設定」に気を配ろう

初心者の方と一緒に撮影していると、「ホワイトバランスはどうしよう」「露出はもう1段明るい方がいいかな」といった会話を耳にすることがあります。

しかし、これらは後から現像する際に、色味を変えたり露光補正を行ったりして、いくらでも変更できる設定です。

後から変えられる設定の微調整に、撮影という限られた時間の中でわざわざリソースを割くのはナンセンスです。

それよりも、「絞りによる前景のボケ方の違い」「角度による被写体の見え方の違い」といった、現像時にどうにもならない設定を吟味することこそ、撮影時に現場で行うべきなのです。

また、撮影時にある程度時間が撮れる場合は、複数の設定で撮影しておくことをおすすめします。

乗り物や花火など一瞬を仕留めるような撮影では不可能ですが、夜景や星空などをまったりと撮影する場合は、最低でも3通り以上は設定を変えて撮影するようにします。

カメラのモニター越しに見ている画像と、パソコンのデスクトップでの見え方には違いがあり、「もっとこんな設定で撮っておけばよかった」と後になって後悔することも多いのです。

④風景写真の「現像」

現像時はゴールを決めよう

撮影地で納得のいく画像がカメラに収まったら、最後の現像段階に入ります。

大切なのは、意図もなくやみくもに現像するのではなく、ある程度完成形をイメージした上でゴールに向かって現像を行うことです。

下に現像前のRAWデータと、現像後の完成品を並べてみました。

この写真を現像する際、「朝の木漏れ日を強調する」「木の紅葉の色づきを強調する」という2点を目標に設定しました。

前者の目的を実現するため、木漏れ日の部分に円形フィルターを適用し、かすみの除去と明瞭度の強化を行って光芒のエッジを強調しました。

また後者の目的を実現するため、木のシャドウ部を持ち上げた上で、赤色とオレンジ色の彩度を強くしました。

「とりあえずそれっぽい写真にしよう」ではなく、「こんな写真にしたいからこうやって現像しよう」という意識で編集ソフトを触るのが、現像の最大のコツです。

Lightroomの機能を使い倒そう

現像ソフトと言って最初に思いつくのが、Adobe社のLightroomです。

直観的でわかりやすい操作と豊富な機能が人気で、多くのカメラマンに愛用されています。

このLightroomの機能を隅から隅までマスターして使い倒すことで、自分のイメージ通りの作品を仕上げられる可能性がぐっと高まります。

Webサイトや本などで勉強するのもいいですが、とりあえず全ての機能を自分で触ってみることをおすすめします。

あらゆるパラメータを自分で動かしてその際の画像の変化を見ることで、「この機能にはこんな効果があるのか」と自然に分かってくるようになります。

RAW現像のワークフロー

(1)構図を整える

まずは傾き補正とトリミングを行って、構図を整えます。

構図に歪みがある場合は、「ゆがみ補正」や「変形」などの機能も有効です。

自分にとって気持ちの良い写真となるよう、納得のいくまで構図を追い込みましょう。

(2)基本補正を行う

諧調や外観などの基本的な補正を行っていきます。

「露光量」や「コントラスト」などでは画像全体の補正が、「ハイライト」や「シャドウ」などではトーンごとの補正が可能です。

ひとつだけアドバイスを行うとすれば、やみくもにシャドウを上げすぎないことがポイントです。

シャドウを上げすぎてしまうと、全体的にコントラストの無いのっぺりとした写真になってしまいます。

「この部分が暗いから明るくしたい」と思ったら、シャドウの値を上げるのではなく、当該部分に円形フィルターや補正ブラシなどを適用して露光量を上げ、コントラストを維持しながら明るさを整えることが重要です。

(3)色味を調整する

写真全体の色味を整えていきます。

まずは「明暗別色補正」を用いて、ハイライト部とシャドウ部にそれぞれ色を乗せていきます。

この色の乗せ方によって写真のイメージが大きく変わるので、非常に重要な作業です。

さらに「HSL」で8色の色ごとに色合いや彩度などを調整していきます。

例えば、木々の緑の部分だけ彩度を強めたり、空の青色をより明るくしたりといった、個別の調整が可能です。

(4)細かい調整を行う

一通り調整を行ったら、後は画面全体を見て細かい部分の微調整を行っていきます。

上に挙げた機能はほんの一例で、Lightroomには他にも便利な機能がたくさん存在します。

それぞれの機能を駆使して、画像を完成のイメージに近づけていきましょう。

⑤自分の作品を多くの人に見てもらおう

アウトプットは上達への近道

完成した自信作は、自分でしまい込んで塩漬けにしてしまうのではなく、世間に出してたくさんの人に見てもらいましょう。

自分の作品を褒めてもらえれば、今後の趣味活動を行っていく上での大きなモチベーションになります。

また、自分には無い視点からのフィードバックを受けることもあり、写真に対する視野が広がります。

何より、アウトプットしていくことで同じように写真を趣味とする仲間との繋がりができます。

撮影スポットなどの情報を共有したり、一緒に撮影に出かけたり、仲間との出会いが写真の世界を大きく変えてくれます。

最初は少し抵抗があるかもしれませんが、是非写真を通して世の中と繋がってみましょう。

作品を見てもらう方法

(1)SNS

最も手っ取り早いのがTwitterやInstagramなどSNSでの公開です。

フォローやリツイートなどの機能もあるため、他のユーザーと繋がったりフィードバックを受けられる可能性も高いです。

(2)Webサイト

SNSの欠点は、タイムラインという形式上、過去の投稿がどんどん流れて行ってしまうということです。

自分の写真を体系的にまとめ、どんな写真を撮っているのか一目でわかるようにしましょう。

最近では「Adobe Portfolio」など、手軽にポートフォリオサイトを作れるサービスも展開されています。

(3)写真展

写真展の良さは、データとしてのアウトプットだけでなく、印刷した写真をじっくりと鑑賞してもらえることです。

個人で開催することは難しいですが、SNSで出会った仲間や、写真コミュニティなどの仲間と共同で写真展を開いてみてはどうでしょうか。

⑥最後に

今回は「風景写真の撮り方」についてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。

長々と書いてきましたが、何より大切なのは「数をこなすこと」だと思います。

SNSで目にする超絶条件の風景写真も、何度も現地に足を運び、失敗を繰り返してやっとの思いで撮影されているものばかりです。

また、実際に場数を経験することから学びを得たり、コツを掴むことも多々あります。

是非皆さんも色々な場所に出かけ、たくさん写真を撮ってみて下さい。それが上達への一番の近道です。

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